SABED環境シミュレーション設計賞2019【学生部門】の受賞作品は以下の通りです。

最優秀賞、優秀賞の作品は、タイトルをクリックすると作品が見ることができます。

最優秀賞

囲まれた繋がり

中坂魁仁(東北大学大学院 修士一年)
石川大(東北大学大学院 修士一年)
片平有香(東北大学 学部四年)
佐藤碧(東北大学 学部四年)
川岸岳大(東北大学 学部四年)

<審査員コメント>

  • オープンスクールにおける音や光、風の問題を環境シミュレーションの対象とした点が興味深かった。生徒数の減少により低密度化が進む昨今の学校建築では、問題の解決自体がさほど難しくないとも言えるが、ひとつひとつの問題を誠実に解いて建築の姿を導き出す設計姿勢に好感を持った。
  • 音響まで含めた様々なシミュレーションを用い、学校建築としての完成度があることが評価できる。一方で、シミュレーションにより新たな形態を見つけることができたかが課題。
  • 学校建築の音環境・光環境に対する問題設定とそれに対するシミュレーションを用いた解決案の検討については、非常に説得力の高い提案となっており、全体として堅実で好感度の高い作品となっていた。
  • 建築環境工学に関する素養を持ち合わせた上で、シミュレーションを効果的に使用していると感じさせる良作であり、完成度の高さが評価された。
  • 風、光、音のシミュレーションを通し、学校建築の提案を行った作品で、各種シミュレーションがバランスよく活用された総合的な完成度の高い作品と評価できる。
  • 既存の学校建築が抱える光環境・音環境の問題点をきちんと捉えて、シミュレーション委より解決する設計プロセスは非常に完成度が高かった。また、審査員の質疑に対する的確な回答も高評価であった。

優秀賞

移り変わるまちの交流点

矢野裕一朗(東京大学建築学科4年)

<審査員コメント>

  • ローコストのリノベーションにおいては環境性能が犠牲になることが多いが、高い評価を受けるリノベ作品を環境的視点から再リノベーションする試み。地道なトライアンドエラーを繰り返して辿り着いた改修案では、地域に開かれた建築をさらに奧深くまで開くことに成功しているといえる。
  • 熱連成のCFDシミュレーションを用い、夏と冬の室内温度環境の改善に取り組んだ点が評価される。一方で天井を追加するという夏対策の手法の妥当性、およびCFDシミュレーションの信頼性の向上が課題。
  • シミュレーションを用いた地道な検討過程については高く評価されよう。普通の吊り天井を追加するというある意味当たり前の対策については、より魅力的な解決法がなかったかどうか、もう一歩検討してみても良かったのではないか。
  • より地域に開かれた快適な空間を設計することを目標とし、規模が小さい計画であることを活かして非定常CFD解析により空間分析の解像度を上げて繊細な検討を行おうとした点が評価できるが、その解析の妥当性には疑問が残った。
  • 夏季、冬季を対象に室内の熱・風環境解析を実施し、室内空間の改善を行った意欲的な作品と評価できる。夏季の通風時の検討において、CFDにより具体的な提案法に結びつかなかった点がおしい。
  • 断熱改修や吹き抜け位置の変更など、既存建築の改修というプログラムの制限の中で、効果的な提案がされていた。蓄熱という現象に着目して、CFD非定常計算に挑んだ点も評価できる。
六次の狭間

中井彬人(修士1年/東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻)
今泉裕真(修士1年/東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻)
遠藤聡人(修士1年/東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻)
石津光(学部4年/東北大学工学部建築社会環境工学科)
荻原隆太朗 (学部4年/東北大学工学部建築社会環境工学科)

<審査員コメント>

  • 中東の過酷な気候の中で開放的な展示空間を如何に実現するか。シミュレーションを使って探求した構想の大きさは大いに評価したいが、最初に着想した形態に拘りすぎた感がある。自分たちの美的感覚を超えた形態が導き出されてきても、それをドライブしていくような柔軟さが欲しい。
  • 多様なシミュレーションで特殊な形態の建物を成り立たせようとする努力が高く評価できる。一方で、アブダビという特徴的な気候に即した形態だったかは課題。
  • 応募作品の中では最も大胆で面白い提案であった。初期の問題設定が大きいだけに、環境シミュレーションとしては本当はもっと色々と試して突き詰めることができるはずだということがはっきりと見えてしまう点が、優秀賞に留まった理由の一つかと思われるが、可能性は感じさせられる作品であった。
  • 特殊な気候条件の敷地を選定し、大胆な建築形態を提案しており、意欲的な案であった。また、吹き抜けを利用した空調計画の提案内容も高度なものであった。ただ、暴力的ともいえる提案ゆえに、日射対策などの基本的な検討が不十分である点が目についてしまったのが惜しい。
  • 大規模な室内空間を対象に気流解析、光解析を通して検討を行ったほか、通年の根通貨計算を通し、省エネ効果を定量的に評価した作品。中東という特殊な環境下でどのように建築を成立させているか、シミュレーションを通した検討が詰め切れなかった点がおしい。
  • ビスタを考慮した大胆な建築形態からCFD解析による空調のシミュレーションから導き出された鑑賞空間のディテールまで、様々なスケールでの検討を行っている点は高く評価された。一方で、アブダビという敷地の選択に対して太陽位置や直射光に対する対策に言及がなかった点が惜しまれる。
大宮前体育館新案「人の振る舞いと風の道」

服部充紘(東京大学大学院修士1年)

<審査員コメント>

  • 原案同様、住宅地の景観に配慮して大きなボリュームを地下に埋めた上で、敷地内、さらには内部空間にまで風が吹き抜ける環境を実現すべくシミュレーションを行っている。昨今の公共建築から失われつつある身体的快適性を追求する試みとして高く評価したい。
  • 既存の体育館の通風を特徴的な屋根形状により改善できることをCFDにより示しており、最終的な形態も魅力的。一方でシミュレーションが形態の決定にどう貢献したのか、過程をしっかり表現することが課題。
  • 通風を重視して導き出された形態が、結果として光環境・視環境の点からも魅力的な空間になりそうであった点は高く評価されよう。
  • 通風シミュレーションによって、その魅力的な形態の優位性が確認されていた。また、プレゼンテーションも美しく、非常に好感を持てる案であった。一方で、室内競技場部分は閉鎖的な空間となっており、地域住民の健康増進を目的としたスポーツセンターとしてより柔軟な提案があっても良かった。
  • CFDシミュレーションを通し、通風環境を丁寧に読み解いた作品。解析により得られた屋根形状が効果的なプレゼンテーションにより、作品の魅力を引き立てた。室内競技場の空間と結びつけた提案まで、もう一歩踏み込んでも良かったののではないか。
  • 有機的な屋根およびランドスケープの形態が、各所でウィンドキャッチとなった、建築形態と風環境がマッチした提案が評価された。シミュレーションによって発見された建築形態と風環境との関係性をより分かりやすく伝えるよう、プレゼンテーションに一工夫があると良かった。

奨励賞

Reading Nature_An Eco Library as Children’s Playground

Wu Min Shiun(NCKU,department of architecture)

<審査員コメント>

  • 設計内容、プレゼンテーションの密度共に、今回の応募案の中で最も高かった。一方で、シミュレーションの内容の多彩さ故に、建築全体としてのメッセージが曖昧になってしまった点が残念である
  • 手堅い気候分析と様々なシミュレーションにより真摯に取り組んでいる良作。
  • 緻密な環境解析が高く評価されよう。ただし建物内部で過ごす人にとっての魅力がプレゼンテーションの中で今ひとつ伝わってこなかった。
  • 一人で気候分析から各種シミュレーションを実施したエネルギー量が高く評価された。建築の内部空間の魅力がプレゼンテーションから十分に伝わってこなかったのが残念であった。
  • 各種シミュレーションが活用された良作。作品の魅力をより引き立たせるシミュレーションが、効果的に実施されていることがプレゼンテーションから読み取ることができなかったのがおしい。
  • 設計フェーズごとに様々なシミュレーションを駆使して検討が行われた力作。ただし、最終的な建築の提案の魅力がプレゼンテーションで伝わってこなかったことが残念。
都市の螺旋散歩

齋藤柊(東北大学学部4年)
小林炎(東北大学修士1年)
宍倉健太(東北大学修士1年)
沓沢康平(東北大学学部4年)
白須公二郎(東北大学学部4年)
松橋佳菜未(東北大学学部4年)

<審査員コメント>

  • 緑化された巨大アトリウムの室内環境を快適化することを目指すよりも、最初から部分的に外部化してしまった方がより簡単に、快適な環境が得られるのではないか。解くべき問題をわざわざ難しくしている点が気になった。
  • 現実の物件よりも魅力的な形態になっていると感じる一方、室内のアトリウム緑化などの現実性に課題を残す。
  • ガラスを多用した建物内部で植物を育て、かつ人間にとって快適な環境を提供しようとした場合の日射熱の問題を充分に解けていない点が気になった。
  • 様々な検討がされている労作であるが、ガラス張りのアトリウムに対して、外皮性能や空調計画の工夫による温熱環境調整手法の検討が不十分な印象であった。
  • アトリウム空間を中心に、春夏秋冬の通風をCFDにより分析を行った力作。室内に緑化空間を取り込んだまま各種検討を行ったことで難しさが残った。
  • 緑化されたアトリウム空間の必然性が、プレゼンテーションの中で伝わってこなかった。